2017/07/28

夜の散歩が好きだ

 

夜は街全体が静かで、昼に比べて刺激が少ない。刺激が少ない方が、自分が感じたり思ったりすることについて、それらを自分自身のものだとして認識しやすい。簡単に言えば、自分と向き合いやすくなるということだ。私は感受性の強い人間なので自分の感覚と向き合うことが好きだし、そのことに喜びを感じる。夜は、私が私自身を感じることができるように手助けをしてくれる。そのために色んなものを見せてくれる。

 

夜の街は本当に幻想的なんだ。全てが闇に包まれてしまう。昼間に見えていたものが見えなくなったり、逆に、昼間に見えなかったものが見えてきたりする。あれ、標識って、信号って、こんなに不気味だったっけ。誰もいない交差点って凄く美しい。川のせせらぎって普段こんなに聞こえないよな。月が綺麗だ、。他にも、例えば、何気ない路地が、不思議な世界に繋がる抜け道に見えてきたりもする。まぁ、実際にそんなことはないのだけれど。とにかくそんな他愛のない事を思いながらフラフラ歩くのが好きだ。周りの世界が暗くて不思議で危うく見えるから、それとは対照的に、自分自身をこの世界に存在している確かな実在として感じることができる。この瞬間、この気持ちだけは確かで、本当のものなんだと思う。今ある気持ちは、もしかしたら明日の朝には消えて無くなってしまうような、脆くて危ういものかもしれない。それでも今は確かにここにあるんだと信じられる。凄く刹那的だけど、命を削って瞬間を生きているようで私は好き。散歩が終わって家に辿り着くとき、結局、あるのは現実だけで幻想的なものは何もなかった、と、幻想的だったのは私の心だけで、世界はいつだって普通通りなんだ、と、思うことになる。それでも夜の散歩は好きだ。最後にこうやって現実に戻ってきてしまう淡白な終わり方も含めて、すごく良いんだ、夜の散歩は。